思索日記

本を読んで思ったことを書いてます。

知識の資本主義 知識や手順を再利用可能にしておくことは、複利的に価値を生み出す

本を読んで得た知識、いつもやる仕事の手順やTipsを面倒くさがらずにまとめておき、再利用可能な状態にしておくことは、結果的に複利的な価値を生み出す。

理由を二つ挙げる。第一に、再利用可能なナレッジは、認知資源と時間を節約する。この再利用性は一時的なものではなく、株式の配当のように節約効果がずっと持続する。節約された認知資源と時間は、そのまま余裕として確保するのは勿論、さらなるナレッジを生むために再投資すれば、複利的にナレッジと認知資源と余剰な時間を生み出すことができる。

第二に、再利用なナレッジがたくさんたまると、ナレッジ同士がつながる確率が上昇することで、ナレッジの集合自体の価値が飛躍的に高まっていく。

これらの二つの作用(節約&再投資による複利の効果と、蓄積によるナレッジ全体の価値向上)により、大きな仕事を実現できる。というか、他人や過去の自分が考えてまとめてくれたナレッジを活用しなければ、知的な意味で大きな仕事は成し遂げられない。

この様子は資本主義にも似ている。蓄積したナレッジは資本となり、複利的に巨大化する。大きなナレッジの集合は、認知資源と時間の節約という形で果実をもたらしてくれる。

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消費資本主義![本紹介・読書感想]

タイトルから想像できるように消費主義批判の本・・・ではあるんだけど、メイントピックはそれじゃない。 これは進化心理学の本であり、マーケティングの本だ。・・・いや本当だって!

だから本書と関連するのは「資本論」ではなく、次のような本が該当する。

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男は独自性で、女は協調性で性的自己アピールをする?:動機付けが同調性に与える影響について

本記事は元論文の全訳ではなく、面白いと思った部分をピックアップしてエンタメとして紹介するものです。

元論文: Griskevicius, Vladas et al. “Going along versus going alone: when fundamental motives facilitate strategic (non)conformity.” Journal of personality and social psychology vol. 91,2 (2006): 281-94. doi:10.1037/0022-3514.91.2.281

研究1

人が他人と意見をあわせたりあわせなかったりするのには、どういう要因が関係しているだろう?

防衛が必要なとき。悪目立ちをしないため、あるいは仲間と一緒になって敵を追い払うために、仲間と一緒にいたくなる傾向がある。

性的パートナーを見つけたいとき。目立って社会的優位性を示したいと思ったり(男性)、協調性を示すために悪目立ちを避けたいと思う傾向がある(女性)。

他の要因として、他人と意見を合わせるということが肯定的なメッセージを発するのか、否定的なメッセージを発するのか ということも関係がありそう。美術館で絵を評価する場面では、いい絵だと評価することは肯定的なメッセージを発する。性的パートナーを見つける場面では、男性は「他の人とはちがって自分だけはいい評価をするぜ」というメッセージを発する動機がある。女性の場合は「他の人とは違って自分だけは悪い評価をする、とは思われたくない」という動機がある。

上述の、①性別 ②場面 ③メッセージの性質によって、同調性が実際に変化するのかどうかを確かめるために、研究1では次のようなデザインのもと実験を行った。

実験デザイン

  1. 被験者は心理学入門のクラスから募集され、男性113名、女性124名が参加した。
  2. 被験者は芸術的な絵40枚(たくさんあるデータセットの中から抽出され、他の被験者とは異なるように思わせた)を見せて、それぞれ1(全く面白くない)から9(とても面白い)までの9段階で評価するよう支持された。ちなみにこのうち39枚の絵はフェイクで、1枚の絵だけが次以降の手順で重要となる。
  3. 被験者は次の4つの条件のうちどれかに割り当てられ、異なる操作を受けた(プライミング操作)。*1
    1. 恋愛プライミング条件: ロマンチックな恋愛について書かれたシナリオ(約850語)をよく読んで、場面を想像するよう指示される。
    2. 脅威プライミング条件: 深夜に一人でいるときに怖い思いをする出来事について書かれたシナリオ(約850語)をよく読んで、場面を想像するよう指示される。
    3. 中立プライミング条件: 同性の友人と楽しいコンサートに行く場面について書かれたシナリオ(約850語)をよく読んで、場面を想像するよう指示される。
    4. 非プライミング条件: プライミングなし。
  4. 被験者は「これから他の同性の被験者3名と一緒に、美的嗜好についてディスカッションしてもらいます。その前にまず、こちらの絵について評価してください」と伝えられる。この絵は手順2で事前に得点を評価しておいたものと同一であるが、被験者本人にとってはたくさんあるデータセットの中からランダムに1枚選ばれたものだと思っているので、他の被験者は初見である可能性が示唆された。絵を評価する際には、「他の被験者3名」には実際に会わずコンピュータ上で評価を行った。このとき、「他の被験者3名」がどのような評価を行ったかわかるようにされた(つまり順番に評価を行い、自分が最後の順番になっているようにされた)。実際には他の被験者3名はおらずコンピュータで回答がコントロールされていた*2。回答者はさらに2群にわけられ、「他の被験者3名」の回答が次のようにコントロールされた。
    1. 肯定的回答条件: 8点, 8点, 7点
    2. 否定的回答条件: 2点, 2点, 3点

    この条件のもと、被験者自身の絵への評価を回答させた。これが本実験の従属尺度(とりたい目的となるデータ)となる。

実験結果

  • 対照条件(中立プライミング条件と非プライミング条件)では、肯定的回答条件でも否定的回答条件でも、同調的(意見を他の被験者3名とあわせる)な回答をしていた。男女間での有意差なし。2つの対照条件間の有意差なし。
  • 脅威プライミング条件では、対照条件にくらべて同調性が高まった。この効果は男女とも差が無く、肯定的回答条件・否定的回答条件の別も関係なかった。
  • 恋愛プライミング条件では、予想通り男女で異なる結果が得られた。
    • 男性の場合、周りの判断が否定的であれば、非同調的(つまり「自分だけはこの絵を評価するぜ!」)な評価を行った。一方、周りの判断が肯定的なとき、同調も非同調も示さなかった(対照条件と同程度)。
    • 女性の場合、周りの判断が肯定的であれば、同調的(つまり「自分もこの絵を評価するわ!」)な評価を行った(対照条件よりもさらに強い同調性を示した)。一方、周りの判断が否定的なとき、同調も非同調も示さなかった(対照条件と同程度)。

考察

  • 脅威プライミング条件では、身を守りたいという動機により同調性を高めたと考えられる。
  • 恋愛プライミング条件で男性が否定的回答条件下で非同調したのは、あえてプラス評価をするということで好意的なメッセージを送れるからだと考えられる。一方女性が否定的回答条件下で同調しなかったのは、同調しても好意的なメッセージを送れないからだと考えられる。

研究2

研究1では、男性は恋愛プライミング条件を与えられると、周囲の意見が否定的であってもプラス評価をする傾向があることが示された。しかし、一般的に周囲の意見に同調しておくことは意思決定の正確さにつながるため、非同調は適応的でないように思われる。これは不可解だ。

この不可解さを解決するための鍵は、判断の内容が主観的な意見なのか、客観的な答えをもつものなのか にあるかもしれない。客観的な答えを持つトピックでは、同調して正解を引く可能性を上げた方が、非同調して賭けに勝つよりもメリットが大きい。一方、(研究1と同様)主観的なトピックでは、非同調してプラス評価をすることで好意的なメッセージを送ることに男性にとってのメリットがある。

したがって本研究2では、恋愛的な動機の下、主観/客観のトピックおよび男女の別が、意見の同調性に対してどのように影響するかを検証した。

実験デザイン

  1. 被験者は心理学入門のクラスから募集され、男性38名、女性31名が参加した。
  2. 被験者は研究1と同様、プライミング操作を受けた。プライミング条件として、次の2種類が用意され、いずれかに割り当てられた。
    1. 恋愛プライミング条件。
    2. 中立プライミング条件。(研究1で中立プライミング条件と非プライミング条件の差がみられなかったため、中立プライミング条件のみを用意した)
  3. 被験者は6種類の質問に回答するよう指示された。質問は次の通り。
    1. [主観的] メルセデスベンツBMW、2つの高級車のうち選ぶならどちら?
    2. [主観的] 車の色を選ぶ場合、シルバーとフォレストグリーンのどちらの色?
    3. [主観的] フェラーリランボルギーニ、2つのスポーツカーのうち選ぶならどちら?
    4. [客観的] ニューヨークに済むのとサンフランシスコに住むのでは、物価が高いのはどちら?
    5. [客観的] サウスウエストとアメリカウエスト、どちらの航空会社の方が定時到着率が高い?
    6. [客観的] 緑色のシャツと青色のシャツでは、どちらのほうが日差しを遮り涼しいか?

    このように、主観的質問では、どちらを選んでも望ましさに大差なさそうなものが選ばれた。これにより、研究1の好意的・非好意的メッセージの次元を中和することができる。 各質問はランダムな順番で示された。被験者は、回答を7段階(確実に選択肢A=1、確実に選択肢B=7)で行った。 回答のとき、「他の回答者の回答割合が見えちゃうけど、気にしないで回答を続けるように」と指示された。このときの他の回答者の回答割合とされる数値は、どちらかの回答(選択肢Aか選択肢B)に強く偏っているようにした。 多数回答と質問項目の組み合わせは、被験者によって変化させてランダム化した。

実験結果

  • 中立プライミング条件(対照群)では、性別による有意差なし。
  • ライミング・性別・トピック種別(主観/客観)の3元交互作用*3が有意に認められた。
    • 主観的なトピックでは、プライミング条件×性別の2元交互作用が認められた。恋愛プライミング条件の男性は非同調的な回答を行い、プライミング条件の女性は同調的な回答を行った。
    • 恋愛プライミング条件のとき、客観的なトピックでは、男女とも同調的になることが予想された。予想通り、客観的なトピックでのとき、恋愛プライミング条件では非プライミング条件に比べて男女ともより同調的になったが、プライミング条件×性別の交互作用は有意でなかった。

考察

  • 研究1とは別の同調性尺度を用いたにもかかわらず、(主観トピックを用いた実験により)研究1と似たような結果を再度得ることができた。
  • トピックが主観的なのか客観的なのかで、同調性に差が起きることが示せた。客観的なトピックでは間違って恥をかく可能性があるが、主観的ならそれが無いため、男性がより自己呈示的になることを確認できた。
  • 本研究2では、質問への回答は他人と共有されなかった。にもかかわらず今回の結果のように恋愛プライミングの効果が持続することが判明したのは注目に値する。

研究3

これまでの研究は、「パートナーを得られるかも?」という動機がどのように同調性に影響を与えるかについて正確に明らかにしてこなかった。

そこで次のように仮説を立てた:男性はパートナーに向けて自身をアピールするために自己主張をする。100人規模の大きな集団であれば、90:10のうちの10側に入ればある程度目立つことができる。しかし5人規模の小さな集団で目立とうとしたら、3:2のうちの2側に入るだけでは十分に目立つことができないため、同調する意義が小さいのではないだろうか?4:1のうちの1側になれるときだけ、同調しようとするのではないか?女性の場合には、自身が集団の結束により役に立つことをアピールしようとするならば、集団が2:1で分裂しているときに2の側につくことはそれほど意義がないのではないだろうか。

実験デザイン

  1. 被験者は心理学入門のクラスから募集され、男性118名、女性97名が参加した。
  2. 以後の手順は研究2とほとんど同じ。以下の点のみが異なる。
    1. 被験者は6項目ではなく、10項目の質問に回答した。設問のうち4つは主観的項目、4つは客観的項目、2つはフィラー*4とした。
    2. いずれの項目も、研究2と同様、他の被験者の回答を見ることができた。今回は他の回答が何人 vs 何人の比率になっているのかを確認することができた。フィラーは2:2, 主観的項目と客観的項目は半数が4:0で半数が3:1になるように設定された。

実験結果

  • 中立プライミング条件(対照群)では、性別による有意差なし。
  • 主観項目で意見が4:0になっているとき、性別とプライミングの効果が有意に認められた(2元交互作用が現れた)。男性であればプライミング下で非同調、女性であればプライミング下で同調*5
  • 主観項目で意見が3:1になっているとき、意見の同調性・非同調性はプライミング・男女にかかわらず認められなかった。
  • 客観項目でも、意見が4:0になっているときはプライミングの効果が有意に認められた(研究2と同様)。
  • 客観項目で意見が3:1で割れているときには、プライミング・男女にかかわらず同調も非同調もしなかった。

考察

  • 恋愛プライミング条件・男性・(小規模集団では)他メンバーの全会一致 という条件のみで意見の非同調性が認められたことで、恋愛動機が男性の自己呈示にどのような影響を与えるのかが見えてくる*6。全会一致であれば、自分だけ違う意見を述べることで自分を目立たせることができるが、意見が割れている場合に少数派についたところで自分を目立たせることにつながりにくい。
  • 女性の場合には、他メンバーが全会一致しているときには自分だけ違う意見を言わないようにする動機が強く存在するが、すでに意見が割れている場合にはそのように同調する動機が小さくなる。
  • 同調性は、多数派の割合のほかに集団のサイズにも影響される。従って本研究3の結果は、研究2の結果とは矛盾しない*7

まとめ

人々の意見の同調性について調べた研究1〜3で、次のことを確かめられた。

  • 脅威を感じ、危険から身を守りたいと思うとき、一般に同調性が高まる。
    • この現象は、集団が持っている意見が肯定的であっても否定的であっても見られる。
  • 恋愛の動機を感じ、異性の気を引きたいと思うときに同調性が変化する。この効果は男性と女性で異なる方向性を示す。
    • 男性の場合、①主観的な話題で、②自分以外の意見がまとまっていて、③あえて同調しないことで好意的なメッセージを送れそうなとき に非同調性が高まる。
    • 女性の場合、①主観的な話題で、②自分以外の意見がまとまっていて、③同調することで好意的なメッセージを送れそうなとき に同調性が高まる。
    • 男性でも女性でも、①客観的な話題で、②自分以外の意見がまとまっているとき に同調性が高まる。
  • 恋愛動機の効果は、集団が同性であっても(研究1)、自分の意見を公表しない場合であっても(研究2、3)現れる。

*1:ライミング効果とは、ある刺激(先行刺激)を受けた後、しばらくの間もとの刺激の影響が無意識下で継続し、後続の刺激に対する反応に影響を与えるというもの。「老人について書かれた文章を読ませた後、歩く速度が遅くなる」などが有名。ファスト&スローなどで詳しく紹介されている。

*2:本文中に明記がなかったけどそう解釈しました

*3:ブログ筆者注: 1つまたは2つ以上の要素(因子という)を何パターンかに変化させて、結果への影響がどの程度強く現れるのかを調べる統計的手法を分散分析という。分散分析では、因子が単独でもたらす効果(たとえば本実験であれば「基本的に女性はいつでも同調性が高い」とか)も調べるし、複数の因子の組み合わせがもたらす効果(「プライミングと性別とトピックの組み合わせが特定の場合だと同調性が大きく変化する」のように)も調べる。後者のような効果のことを因子の交互作用という。3つの因子の交互作用であれば、3元交互作用という。

*4:フィラーがどんな中身だったのかは書いてなかった

*5:論文内の考察では、「研究2と同様」女性側の同調は有意でなかったとあった。うーん?

*6:本研究の動機は、「パートナーを得られるかも?」という動機がどのように同調性に影響を与えるかを明らかにしたいというものだった。

*7:どこを気にしているんだろうか?は自分には読み取れなかった。。

どこかにビューーン!でねぶた祭の青森にスマホなし旅してきた

情報量が多いタイトルになってしまった。JR東日本のサービス「どこかにビューーン!」というのを使ったというのと、青森にねぶた祭を見に行ってきたのと、スマホを家において旅行してきた という三つを一度にやったので記事にしてみました。

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2022年に読んだ本

昨年は「インプットを重視していたのでそんなに更新できませんでした」とか言っておいて、そんなに数読んだわけではなかったですね。

今年は仕事がめちゃくちゃ忙しかったのですが、活字を追うペースが上がったのと、本を読むことで心と精神を仕事から解放できることに気づいたので、1週間に1冊のペースでこつこつと読書を続けることができました。たくさんの面白い本に出会えたので、今年出会った本のマイベストを一言ずつ紹介して本年を締めくくろうと思います。 面白かった方から順に10冊紹介します。

1. 「欲望について」ウィリアム・B・アーヴァイン

tomato10.hatenablog.com

以前紹介したこの本が今年一番面白かったです。欲望は私たちの活力になってくれる一方、無制限に満たし続けるわけにはいきません。幸せに生きるとは?を考えるときに、その根源にあって上手に付き合う必要があるのが欲望です。なんとなく直視しづらい、私たちの心の奥底にある「欲望」について理解を深めるための一冊です。

2. 「おいしさの錯覚」チャールズ・スペンス

www.kadokawa.co.jp

私は「山の上で食べるカップラーメンが世界で一番おいしい」という持論があるので、食事のおいしさというものは味よりもシチュエーションで決まることは気づいていました。本書はそういうテーマも扱っているのですが、それだけでなく「しけったポテチでもパリパリ音を聞きながら食べるとおいしさが復活する」のような、おいしさを感じる心に潜むバグのようものをハックする試みがたくさん載っていてへぇ〜!となって楽しいです。また、こういった「おいしさの錯覚」を逆手に(正当に?)使って、本気で最高の食体験を実現しようとしている人たちが紹介されていて、ホスピタリティに心を打たれました。

3. 「メタ倫理学入門」佐藤岳誌

www.keisoshobo.co.jp

「どうして人のものを盗んではいけないの?」「とまと君も自分のおもちゃとられたら嫌でしょ。自分がされたら嫌なことは人にもしちゃいけないんだよ」「どうして、自分がされたら嫌なことは人にもしちゃいけないの?」「・・・」こういうレベルで、道徳のそもそもを考えるのがメタ倫理学です。なぜかわかりませんが道徳のそもそもを考えるのは反社会的で、深掘りしちゃダメな領域な気がするんですが本書では真正面から向き合います。この感覚を踏まえたあとがきがまた良いんだ!!

4. 「進化と感情から解き明かす 社会心理学」北村英哉、大坪庸介

www.yuhikaku.co.jp

心理学が好きで個別トピックでは結構追いかけているつもりなのに、総論・体系的な勉強をしていないなと思ったので入門的に図書館で借りてみた一冊。大学の学部レベルの教科書?っぽい雰囲気でした。特徴的なのは、単に心理学的な実験や事実・理論を紹介するにとどまらず、進化心理学の観点から人の心がそうなっている理由を説明しているところです。人が集団から排除されると孤独を感じるようになっている理由とか、集団の中で一人だけずるをしている人間を排除したくなる理由とか。「人の心は○万年前のサバンナで暮らしているときから変わっていない、的な言説は散々聞いて飽きてきた」とかいう意見もちらほら聞くようになってきた昨今ですがやっぱりこういうの好きです面白いです。

5. 「予想通りに不合理」ダン・アリエリー

www.hayakawa-online.co.jp

定番の行動経済学本。私は先に「ファスト&スロー」を読んでしまったので、それよりも内容が薄い気がしていて(失礼)読むのをほったらかしていたのですが読んでみると面白い!そしてやさしい!行動経済学の知見を、ただ面白いだけにとどめずに、「あなたの生活に落とし込むと・・・例えばこんな感じはいかがだろうか?」というアドバイスも入っていてちょっとしたビジネス本としても読めます。知的好奇心あるタイプの人だったらほとんど誰にでもおすすめ。

6. 「知ってるつもり 無知の科学」スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック

www.hayakawa-online.co.jp

私たちはの身の回りにはファスナーや自転車など、そばにいつもあって見慣れていて使いこなせていて、そんなもの簡単に説明できると思っているものがたくさんあるけれど、しっかりと説明してくださいと言われると意外とそれができない!!・・・というところから始まり、さんざん私たちの無知を暴いたあとで、では私たちは知識をどう蓄えて活用しているのか?ということに迫っていきます。賢さの定義が変わる。

7. 「豊かさの誕生」ウィリアム・バーンスタイン

bookplus.nikkei.com

人類通史系。上巻では歴史的に経済的豊かさがもたらされた原因について、一つ一つ丁寧に見ていきます。下巻ではその豊かさが人類にもたらした影響について扱います。今年の初めくらいに資本主義批判の文脈で読んだけど、いま読んだらまた違った視点で読めるかも。

8. 「セックスロボットと人造肉」ジェニー・クリーマン

colorful.futabanet.jp

これまでは人間の欲求を満たすときに多かれ少なかれ他の存在を傷つけていたかもしれないし、誰かが我慢していたかもしれないね。完璧な夫婦関係とはほど遠いし、出産の痛みは薬で軽減できるけれど完璧ではない。でもこれからのテクノロジーは、そういった悩みから私たちを解放してくれる!!!・・・本当にこのままでいいのかな。

9. 「働き方の哲学」村山昇

d21.co.jp

「仕事の楽しさについて」での主要参考文献。仕事・キャリアについて考えるときに幅広い視点を与えてくれる良書です。

10. 「愛するということ」エーリッヒ・フロム

www.kinokuniya.co.jp

恋人関係に悩んでいるときに読んだ一冊。名著です。本書と「人を助けるとはどういうことか」(エドガー・H・シャイン)を読んで以降、ホスピタリティとか「個々を見て対応する」という態度が好きになったような気がします。僭越ですがさびしさ欲望回で書いた「人間の行う儀式とか社会的な絆を確かめ合うような行為はすべて同根である」説は本書にもそのまんま書いてあって、だよねー!と思った記憶があります。

以上!来年も素敵な本に出会えるといいな。良いお年を!!

二項分布によれば、俺は勉強しなくても応用情報受かる

明日10月9日は応用情報技術者試験 秋期の試験日です。 IT業界入って5年目で今更感ありますがまあ持ってないのもどうかなと思ったので明日受けてきます。

最初のころは必死こいて勉強してたのですが、途中から「あれ、これもう頑張らなくてもいけるわ」と気づいたのでぱったり勉強するのをやめました。

二項分布で合格可能性を予測する

二項分布は、YES/NOで判定できて確率で起きる出来事を何度か繰り返したとき、YESとなる回数を確率分布にしたもの(グラフにしたもの)です。

  • コインを10回投げて、表が出る回数。
  • サイコロを12回投げて、1が出る回数。
  • 1週間のうち晴れの日数。*1
  • たくさんある製品の中から100個を標本として抽出したとき、不良品の個数。

試験問題も同様に考えられます。

  • テスト80問を解いたうち、正答できる問題数。

*1:あくまで確率でとらえればの話です。まあそれを言ったら、コイン投げやサイコロは確率事象なんですかね?

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仕事の楽しさについて 第1回

私はいわゆるIT会社に勤めており、主にプログラムを書いたりソフトウェア製品の開発をする「開発チーム」という部署で働いています。 2022年3月。爆発的な広がりを見せた新型コロナウイルス・オミクロン株の感染の勢いが少しずつ落ち着き始めてきた頃、うちの開発チームと同じフロアにいる別チームの上司から、こんなことをぼそっと言われました。

「最近、開発チーム元気ないね。」

コロナの件で何となく疲弊して暗くなっていたのかもしれないし、会社や開発チームがこれまで抱えてきた問題 (詳細は書けませんが) のせいなのかもしれませんが、確かに私もチーム内にいながらそんなふうに感じていました。それで、チームの同僚の方に声をかけて、「会社で気になっていること、うまくいっていないと思うことを話し合い、業務改善につなげよう」という名目でイベントをやってみることにしました。手前味噌ですがこれが結構 (当初は) うまくいって、割とたくさんの意見が出たし、チームメンバーがどんなことを考えて仕事に臨んでいるのかといった普段話さないような内容のことを真剣に話すことができてすごく有意義な活動になりました。この活動は業務外として自主的に行われたことも特筆すべきポイントで、人は良いと思った活動にはたとえ無償であっても積極的にコミットするんだということを身をもって知るいいきっかけになりました*1*2

さて、そのイベントの中で参加メンバーの1人が 「最近仕事が面白くなくて・・・」 のようなことを言ってくれて、上述のようなきっかけで始まったイベントですのでその場は別段荒れることもなかったのですが、私にはこれが非常に深めがいのあるテーマだなと感じたのです。私も仕事が面白くなかったんでしょうかね。あるいは、仕事は面白くあるべきだと思っていたので思わず反応したのかもしれないです。いずれにしろ、その方の発言が今回の記事を書いてみようと思ったきっかけです。

前置きが長くなりました。今回は仕事の楽しさについて取り上げます。 もともとは前回同様、いくつかテーマに沿った本を読んで、その内容をまとめ・・・ようと思っていました。 ただ、現時点では十分に調べきれていなくて、今回だけでは完結はしません。全部で3〜4回くらいになりそうです。 「仕事の楽しさ」や「幸せな仕事」というテーマで本を読んでみて、大体こんなことが書いてあったよ、というのが第1回の内容になります。 あとやり残しているのは、そもそも「楽しさとは」という部分とか、本を読んでいて浮上してきた重大そうなサブテーマについてとか、本以外の調査とかです。この辺をしっかり調べてまとめて、自分の意見をまとめ直すところまでやれたら完結にするつもりです。

*1:あとホーソン効果もすごく強く感じた。あの活動が盛り上がっていたとき、チーム内には妙な高揚感とか連帯感みたいなものが生まれていたと思う。

*2:私信。今は止まっちゃってますがまたやりましょうね

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