思索日記

本を読んで思ったことを書いてます。

2022年に読んだ本

昨年は「インプットを重視していたのでそんなに更新できませんでした」とか言っておいて、そんなに数読んだわけではなかったですね。

今年は仕事がめちゃくちゃ忙しかったのですが、活字を追うペースが上がったのと、本を読むことで心と精神を仕事から解放できることに気づいたので、1週間に1冊のペースでこつこつと読書を続けることができました。たくさんの面白い本に出会えたので、今年出会った本のマイベストを一言ずつ紹介して本年を締めくくろうと思います。 面白かった方から順に10冊紹介します。

1. 「欲望について」ウィリアム・B・アーヴァイン

tomato10.hatenablog.com

以前紹介したこの本が今年一番面白かったです。欲望は私たちの活力になってくれる一方、無制限に満たし続けるわけにはいきません。幸せに生きるとは?を考えるときに、その根源にあって上手に付き合う必要があるのが欲望です。なんとなく直視しづらい、私たちの心の奥底にある「欲望」について理解を深めるための一冊です。

2. 「おいしさの錯覚」チャールズ・スペンス

www.kadokawa.co.jp

私は「山の上で食べるカップラーメンが世界で一番おいしい」という持論があるので、食事のおいしさというものは味よりもシチュエーションで決まることは気づいていました。本書はそういうテーマも扱っているのですが、それだけでなく「しけったポテチでもパリパリ音を聞きながら食べるとおいしさが復活する」のような、おいしさを感じる心に潜むバグのようものをハックする試みがたくさん載っていてへぇ〜!となって楽しいです。また、こういった「おいしさの錯覚」を逆手に(正当に?)使って、本気で最高の食体験を実現しようとしている人たちが紹介されていて、ホスピタリティに心を打たれました。

3. 「メタ倫理学入門」佐藤岳誌

www.keisoshobo.co.jp

「どうして人のものを盗んではいけないの?」「とまと君も自分のおもちゃとられたら嫌でしょ。自分がされたら嫌なことは人にもしちゃいけないんだよ」「どうして、自分がされたら嫌なことは人にもしちゃいけないの?」「・・・」こういうレベルで、道徳のそもそもを考えるのがメタ倫理学です。なぜかわかりませんが道徳のそもそもを考えるのは反社会的で、深掘りしちゃダメな領域な気がするんですが本書では真正面から向き合います。この感覚を踏まえたあとがきがまた良いんだ!!

4. 「進化と感情から解き明かす 社会心理学」北村英哉、大坪庸介

www.yuhikaku.co.jp

心理学が好きで個別トピックでは結構追いかけているつもりなのに、総論・体系的な勉強をしていないなと思ったので入門的に図書館で借りてみた一冊。大学の学部レベルの教科書?っぽい雰囲気でした。特徴的なのは、単に心理学的な実験や事実・理論を紹介するにとどまらず、進化心理学の観点から人の心がそうなっている理由を説明しているところです。人が集団から排除されると孤独を感じるようになっている理由とか、集団の中で一人だけずるをしている人間を排除したくなる理由とか。「人の心は○万年前のサバンナで暮らしているときから変わっていない、的な言説は散々聞いて飽きてきた」とかいう意見もちらほら聞くようになってきた昨今ですがやっぱりこういうの好きです面白いです。

5. 「予想通りに不合理」ダン・アリエリー

www.hayakawa-online.co.jp

定番の行動経済学本。私は先に「ファスト&スロー」を読んでしまったので、それよりも内容が薄い気がしていて(失礼)読むのをほったらかしていたのですが読んでみると面白い!そしてやさしい!行動経済学の知見を、ただ面白いだけにとどめずに、「あなたの生活に落とし込むと・・・例えばこんな感じはいかがだろうか?」というアドバイスも入っていてちょっとしたビジネス本としても読めます。知的好奇心あるタイプの人だったらほとんど誰にでもおすすめ。

6. 「知ってるつもり 無知の科学」スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック

www.hayakawa-online.co.jp

私たちはの身の回りにはファスナーや自転車など、そばにいつもあって見慣れていて使いこなせていて、そんなもの簡単に説明できると思っているものがたくさんあるけれど、しっかりと説明してくださいと言われると意外とそれができない!!・・・というところから始まり、さんざん私たちの無知を暴いたあとで、では私たちは知識をどう蓄えて活用しているのか?ということに迫っていきます。賢さの定義が変わる。

7. 「豊かさの誕生」ウィリアム・バーンスタイン

bookplus.nikkei.com

人類通史系。上巻では歴史的に経済的豊かさがもたらされた原因について、一つ一つ丁寧に見ていきます。下巻ではその豊かさが人類にもたらした影響について扱います。今年の初めくらいに資本主義批判の文脈で読んだけど、いま読んだらまた違った視点で読めるかも。

8. 「セックスロボットと人造肉」ジェニー・クリーマン

colorful.futabanet.jp

これまでは人間の欲求を満たすときに多かれ少なかれ他の存在を傷つけていたかもしれないし、誰かが我慢していたかもしれないね。完璧な夫婦関係とはほど遠いし、出産の痛みは薬で軽減できるけれど完璧ではない。でもこれからのテクノロジーは、そういった悩みから私たちを解放してくれる!!!・・・本当にこのままでいいのかな。

9. 「働き方の哲学」村山昇

d21.co.jp

「仕事の楽しさについて」での主要参考文献。仕事・キャリアについて考えるときに幅広い視点を与えてくれる良書です。

10. 「愛するということ」エーリッヒ・フロム

www.kinokuniya.co.jp

恋人関係に悩んでいるときに読んだ一冊。名著です。本書と「人を助けるとはどういうことか」(エドガー・H・シャイン)を読んで以降、ホスピタリティとか「個々を見て対応する」という態度が好きになったような気がします。僭越ですがさびしさ欲望回で書いた「人間の行う儀式とか社会的な絆を確かめ合うような行為はすべて同根である」説は本書にもそのまんま書いてあって、だよねー!と思った記憶があります。

以上!来年も素敵な本に出会えるといいな。良いお年を!!