EVM(Earned Value Management)とは
プロジェクトの進行状況を、スケジュールとコストの面から指標を用いてモニタリング・予測するためのツール。
核となる考え方は、 スケジュールと進捗をコスト換算 することにある。
用語
- EV: Earned Value 出来高。「完了済み作業に対する予算コスト」。進捗率とは関係あるが、進捗率そのものではない。
- AC: Actual Cost 実コスト。「その時点の累積コスト」。
- PV: Planed Value 期間予算。「その時点の完了予定作業に対する予算コスト」。
具体例
簡単なプログラムの作成を行うプロジェクトだとする。10日で完成する計画。
計画
日 | 作業内容 | かかりそうな時間 | かかりそうな時間から求めたコスト | コスト累計 |
---|---|---|---|---|
1 | 企画 | 8 | \30k | \30k |
2 | 基本設計 | 8 | \30k | \60k |
3 | 基本設計レビュー | 8 | \30k | \90k |
4 | 詳細設計 | 8 | \30k | \120k |
5 | 詳細設計レビュー | 8 | \30k | \150k |
6 | 開発 | 8 | \30k | \180k |
7 | 開発 | 8 | \30k | \210k |
8 | テスト | 8 | \30k | \240k |
9 | テスト | 8 | \30k | \270k |
10 | リリース | 8 | \30k | \300k |
進捗確認
4日目完了時点で進捗確認を行ったとする。
日 | 進捗(現在の作業) | 実コスト累計 |
---|---|---|
4 | 基本設計レビュー完了 | \150k |
このとき、EV, AC, PVは以下のようにして求められる。
- EV: 「基本設計レビュー完了」時点での、計画コストを参照する(つまり進捗確認の表だけではなくて、その上の計画の表を参照する)。基本設計レビュー完了は計画で言うと3日目だから、その時点での計画コスト累計は \90k 。つまりEV = \90k
- PV: 4日目完了時点での、計画コストを参照する。\120k
- AC: 3日目完了時点での、実コスト累計を参照する。\150k
分析
EV, PV, ACはそのままでは分析指標にはならず、以下のような分析指標を求めて使用する。
- SV: Schedule Variance. スケジュール差異
SV = EV - PV
作業先行でプラス、作業遅延でマイナス。
今回はSV = 90k - 120k = -30k となり、作業遅延。 - CV: Cost Variance. コスト差異
CV = EV - AC
コスト不足でプラス、コスト超過でマイナス。
今回はCV = 90k - 150k = -60k となり、コスト超過。 - SPI: Schedule Performance Index. スケジュール効率
SPI = EV / PV
効率が良いと > 1, 効率が悪いと < 1 となる。
今回はSPI = 90k / 120k = 75% < 100% となり、スケジュール効率が悪い。 - CPI: Cost Performance Index. コスト効率
CPI = EV / AC
効率が良いと > 1, 効率が悪いと < 1 となる。 今回はCPI = 90k / 150k = 60% < 100% となり、コスト効率がかなり悪い。
「完了まであと」系
- BAC: Budget at Completion. 完了までの予算
今回は10日時点の計画予算で、\300k - ETC: Estimate to Complete. 残作業コスト予測
ETC = (BAC - EV) / CPI
今回はETC = (300k - 90k) / 0.6 = \350k - EAC: Estimate at Complementation. 完了時コスト予測
単に現在までのコスト(AC)に残作業コスト予測(ETC)を足せばよい。
今回はEAC = \150k + \350k = \500k
図解
10日で完成、コスト累計300k
4日目時点の実コストは150k
4日目時点の進捗は3日目相当で、これは90k相当
CVとSV
予測系はここに相当
完了予測日の出し方もあるはずだけど調べるの面倒だった。今日はここまで!
参考
- 結構ややこしいぞ! アーンド・バリュー計算と分析 (2/3):メンバーに贈るプロマネ基礎講座(5) - @IT: ここがわかりやすかった
- EVM (Earned Value Management: アーンド・バリュー・マネジメント) - グローバルプロジェクトマネージャーへの道: いろんな分析指標
- 日本プロジェクトマネジメント協会編「よりよくわかるプロジェクトマネジメント」2019年、オーム社